プログレおすすめ:Amarok「1st Album」(2001年ポーランド)
Amarok -「Amarok」
第81回目おすすめアルバムは、ポーランドのクロスオーヴァー系のプログレッシブ・ロックバンド:Amarokが2001年に発表した1stアルバム「Amarok」をご紹介します。
Amarokは、ギター、ベース、ピアノ、オルガン、ドラムなどマルチにプレイするMichal Wojtasに、バッキングコーラスにBartosz Jackowskiが加わったユニットです。曲によって、ヴァイオリン、フルートなどゲストミュージシャンも連なります。
バンド名「Amarok」から、プログレファンならばおそらくイギリスのミュージシャン:Mike Oldfieldのアルバム「Amarok」(1990年発表)に由来していることが察しつきますよね。音楽的にも、Mike Oldfieldの嗜好ジャンルにもプログレッシブ・ロック、ニューエイジ、アンビエントがあり共通項があります。Mike Oldfieldもまた1973年発表の名盤と誉れ高きアルバム「Tubular Bells」に代表されるようにマルチプレイヤーであり、その音楽との出逢いにより、Michal Wojtasは自身のギタースタイルを模索していきます。他にもイギリスの5大プログレバンドのうちの1つ:Pink Floydにも影響を受けたとのことです。
1stアルバム「Amarok」は一部Bartosz Jackowskiとの共同トラックはあるものの、曲順なども含め、大半はMichal Wojtasが担い、イギリスのロックバンド:Dire StraitsのギタリストであるMark Nopplerや、3大ギタリストのうちの1人:Jeff Beckなどのスタイルにも影響を受けながら、当アルバムは制作されました。
楽曲について
冒頭曲「I’m A Rock」は、アルバムジャケットにも映っているカモメの鳴き声のサンプリングとともに、オルガン、エレキギター、ピアノ、シンセのアンサンブルに導かれ、1分前後からのギターによるクリーントーンのソロフレージングが響くのが印象的に幕を上げます。何かがこれから始まるを迎えると感じるかのように。そして、冒頭曲「I’m A Rock」と間髪入れずに、アコースティックギターとヴァイオリンのフレーズが印象的な2「Fieldmour I」へ繋がります。アコースティックギターもヴァイオリンも、その双方を韻を踏むようにドラムの音のタイミングといい、穏やかにも抒情性溢れるモチーフが変奏されていきます。
ただただ儚く、センチメンタリズムに心が埋もれていきそうになりますね。
6分前後のギターのフレーズを聴けば、Pink Floyd、特にギタリストのDavid Gilmourを想起してしまうかもしれません。9分強の中で、中間部から後半部にあたるギターのフレーズはブルーズフィーリングも感じさせてくれます。
3「Fieldmour II」はアルバム後半の楽曲のようにタイトなリズム感で、全曲のイメージを忘れてしまうぐらいに軽やかで躍動的な楽曲です。前半部はフルートと女性のバッキングコーラス、中間部はギターのコミカルさも伺える軽やかなフレーズ、後半部はアコースティックなギターをアンサンブルにシンセのリードで、1つの楽曲内を3つに分け、1つのモチーフを変奏ではなく拡散していく印象がありますね。
4「Avalon」は、アイリッシュ系を感じさせてくれる小曲。どことなく1990年以降のjeff beckの他者のカバー嗜好や演奏スタイルに近しいと感じるのは筆者だけでしょうか。
5「Fieldmour III」は、4「Avalon」のイメージと2「Fieldmour II」より幾分物憂げでいて儚さのあるピアノのフレーズではじまり、ヴァイオリンのフレーズに、女性のバッキングコーラスがより一層憂いを帯びた印象をもたせますが、3分前後のシンバルヒットと同時に、Pink Floydを想起させるギターと、パーカッシブさにより曲調が様変わりします。そのアンサンブルに、ピアノの単音やフルートが前半部の特徴的なフレーズの断片をシークエンスさせて、エレキギターのよるソロフレーズも重なっていきます。よりプロッグレッシブな展開へ移行すると思いきや、6分30分前後からはまた一変し、ピアノとアコースティックなギターによる大らかなパートへ移行しクロージングします。
アコースティックギターの独奏によるマイナー調の6「Lavera」や7「Aqu」はアルバムの前半部と後半部をリンクさせる小曲といった趣でしょうか。8「Aqu」はエレキギターとシンセを中心としたユニゾンによる変拍子とシンコペーションを意識したリフに、jeff beckの1989年発表のアルバム「guitar shop」以降の楽曲も想起させてくれるファンキーさもあるスリリングな楽曲です。
9「Seya」はどことなくMark NopplerのイメージさせるPOPさやマーチ風の軽やかさを感じさせてくれますが、一筋縄にはいかず、6と同様にギターのフレーズにはテクニカルさが溢れ、そのフレーズもピアノ、フルートが加わっていきながらも変奏していくものだから、圧倒されてしまいます。一聴すればPOPさで片づけてしまいがちそうだけれど、プログレッシブさを追求し耳を傾けると素敵と感じえてしまいますね。
10「Massa」は、1980年代のアメリカのハードロックを想起させるギターリフではじまりながらも、50分前後からシンコペーションを多用したギターストロークも交え、1分45秒前後のギターのソロフレーズ、2分前後からのディレイを活かしたフレーズ、3分前後の前半部のギターリフとの再演、3分40秒前後からのオルガンなど、2つのモチーフを変奏し交錯していく様が印象的です。
6「Avalon」に近しい趣による11「Astron」の小曲に続き、アルバムのクロージング12「Khana」が位置します。この12「Khana」を一聴した時には、エレキギターのソリッドなリフや女性のバッキングコーラスが印象的にも、アルバム中、最もデジタルな肌触りに異質すら感じえました。アグレッシブなプログレッシブさともとらえますが、3分30秒前後で終わる当楽曲は、最後に聴き手へのおまけ、もしくは、次に提示するアルバムの序章を垣間見せてくれたのかな、と考えさせられたクロージングですね。
女性のバッキングコーラスがありながらも、アルバム全篇、インストルメンタルの楽曲が占めます。前半部の「Fieldmour」の名称がついた3つの楽曲を含む5つの楽曲と、6「Lavera」や7「Aqu」の小曲を挟み、後半部の個性あるプログレッシブな楽曲といったアルバムの印象でしょうか。
[収録曲]
1. I’m a Rock
2. Fieldmour I
3. Fieldmour II
4. Avalon
5. Fieldmour III
6. Lavera
7. Aqu
8. Meriba
9. Seya
10. Massa
11. Astron
12. Khana
アルバムジャケットに映るカモメの鳴き声ではじまり、ジャケットの情景を想いながら、楽曲を聴いているうちに、いつの間にか後半部のプログレッシブな楽曲に聴き入ってしまいますね。
AmarokのMichal Wojtasが影響を受けたという、Mike Oldfield、Pink Floyd、Mark Noppler、Jeff Beckのギタースタイルやサウンドメイキングが好きな方、もしくは、インストルメンタルのプログレッシブ・ロックが好きな方におすすめです。
アルバム「Amarok」のおすすめ曲
1曲目は、2曲目の「Fieldmour I」
イントロの音1つが耳に入ってから時を刻むごとに息を吸い込みそうにも、溜息をつくのを忘れ聴き入ってしまう。気が付けば、ギターとヴァイオリンが1つのモチーフから変奏を繰り返していました。前半部から中間部の溢れんばかりの抒情性と、後半部のブルーズなフィーリングも含め、センチメンタリズムにはまってしまいますね。
2曲目は、5曲目の「Fieldmour III」
当楽曲までの「Fieldmour」の名称をもつ楽曲を纏め、あたかも組曲の最後を担う構成や、前半部の2「Fieldmour I」とも劣らぬセンチメンタリズムさも素敵なんです。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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