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プログレおすすめ:Bader Nana「Wormwood」(2011年クウェート)

公開日: : 最終更新日:2015/12/02 2010年‐2013年, クウェート, ネオ・プログレ


Bader Nana – 「Wormwood」

第76回目おすすめアルバムは、クウェートのマルチミュージシャン:Bader Nanaが2011年に発表した1stアルバム「Wormwood」をご紹介します。
Bader Nana「Wormwood」

18歳で音楽のキャリアをスタートし、数々のローカルバンドでプログレッシブ・メタルやネオ・プログレッシブなスタイルの演奏経験しています。当アルバムは、一部ゲスト・ミュージシャンが参加しているものの、ほぼ全ての楽器、演奏をBader Nanaがしています。ボーカルも本人が担当しており、それでいて20歳前半での作品というのだから、アルバム冒頭から数曲を聴いただけでもそのクオリティの高さに驚きを隠せませんでした。

楽曲について

アルバムの序曲ともいうべき冒頭曲1「Wormwood」や7「All Fall Down」などの印象的に小品を織り交ぜながら、2「Rose」のようにエッジの効いたギターと力強いボーカルをメインとした楽曲がアルバム全篇で印象的です。ギターを活かしたハードな演奏によりダークかつヘビーな楽曲と、キーボードのオーケストレーションによるアンビエント風なエッセンスが溢れる楽曲に、アルバムの楽曲が分かれるのではないでしょうか。

例えば、2「Rose」は後者のエッセンスをイントロやエンディングで濃厚に感じさせてくれます。キーボードによるこのオーケストレーションには、プログレッシブ・メタルという印象を取られがちな他楽曲にも比肩する特徴であり、当アルバムがシンフォニック系のエッセンスを感じさせてくれるし、Bader Nanaによるセンスの高さが伺えるんです。

また、3「Quarantine」は、前者のダークかつヘビーであるプログレシッブ・メタルさを濃厚に感じさせてくれます。
当アルバムは、14世紀に大流行し、ヨーロッパの全人口の三割が命を落とした「黒死病(ペスト)」をコンセプトに制作されたと云われており、そのコンセプトに近づけたようなサウンドスケープへ洗練されたアンサンブルを聴かせてくれます。4分前後のテクニカルなギターのフレーズのソロを聴けば、5「Earth 1348」、6「The Plague」、8「The Answers」など、20歳前半ながらもテクニカルなギターを縦横無尽に聴かせてくれることにただただ驚かせられるばかりです。

最終曲10「Destroyer Of Worlds」はギターだけでなく、キーボードによるテクニカルなフレーズも聴かれ、メロウさよりもテクニカルを重視したアンサンブルにおいてBader Nanaのプログレッシブ・ロックの特徴とも捉え聴けます。

アルバムタイトルを和訳した「ニガヨモギ」はロシアで異教徒に捧げられたものであり「呪われた薬草」とも呼ばれていました。フランスの魔女たちが初めて「ニガヨモギ」から調合したアブサンは劇薬とも云われており、人の脳細胞を破壊し、譫妄状態を誘因する危険な薬であることから、19世紀の当時のフランス政府は製造中止したそうです。
相反的に「ニガヨモギ」は薬草の母とも云われています。パンドラの箱ともいうべき表裏一体の意味をもつ「ニガヨモギ」をタイトルに冠したアルバムに、「黒死病(ペスト)」をコンセプトのもと、ダークかつヘビーな様相をアルバム全篇に表現したアルバムではないでしょうか。

[収録曲]

1. Wormwood
2. Rose
3. Quarantine
4. Journey
5. Earth 1348
6. The Plague
7. All Fall Down
8. The Answers
9. Desperate Measures
10. Destroyer Of Worlds

ハードなエッジを効かせたテクニカルなギターのソロ・フレーズと、アンビエント風にも捉えるオーケストレーションを奏でるキーボードが特徴なプログレッシブ・メタルを好きな方におすすめなアルバムです。

既に2013年には2ndアルバム「Anthology」や、PlayStation3でも有名な海外産ゲーム「God Of War」や「Assassins Creed」をトリビュートする楽曲を発表しています。後者はyoutubeで検索することで見つけることが出来るのでぜひ聴いて頂きたいです。

アルバム「Wormwood」のおすすめ曲

1曲目は、最終曲の「Destroyer Of Worlds」
よりプログレッシブ・ロックのエッセンスを聴かせてくれる楽曲として堪能出来るからです。

2曲目は、3曲目の「Quarantine」
2「Rose」のイントロとエンディングの印象を残しながら、当楽曲の後半部のギター・ソロを聴くことで心に印象強く残ったからです。ダークでハードということを抜きにし、純粋に細かく刻むプログレッシブ・メタルで聴かれる的確なフレージングが素敵ですね。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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