プログレおすすめ:Kayak「See See The Sun」(1973年オランダ)
Kayak -「See See The Sun」
第43回目おすすめアルバムは、オランダのシンフォニック系のプログレッシブ・ロックバンド:Kayakが1973年に発表した1stアルバム「See See The Sun」をご紹介します。
Kayakは、1972年に、オランダでTon Scherpenzeel(ピアノ、オルガン、ハープシコード、アコーディオン)、Pim Koopman(ドラム)、Johan Slager(ギター)、メロトロンのMax Werner、ベースのCees van Leeuwenの5人で結成されたバンドです。
今回ご紹介する当アルバム「See See The Sun」は、シンフォニック系のプログレシッブ・ロックの1枚として語られることが多いアルバムです。繊細さに、メロディックでシンフォニック系のサウンドが特徴で、5大プログレバンドのうち、Peter Gabriel期GenesisやYesを彷彿とさせる感触があったり、Supertrampを引き合いにだされることもあります。
音楽におけるサウンド・メイキングとアンサンブル以外に、そのユニークな存在としらしめているのがTon ScherpenzeelとPim Koopmanの強力なコンポンザーが2人いることではないでしょうか。個人的には、同国オランダを代表するプログレッシブ・ロックバンド:Focusのメロディラインのように、オランダには、こんなにもキュートで愛くるしさあるメロディラインをクリエイトするのかと、感じてしまうんです。
2ndアルバム以降、この1stアルバム「See See The Sun」期のようにシンフォニック系のサウンドは薄れていき、唄メロ重視のポップさが際立たせていきますが、あらためて当アルバムを聴くことでヴィンテージ系のプログレッシブ・ロックバンドのような錯覚を起こすぐらいに1970年代の英国ロックの質感の良さを感じてしまうんです。
古めかしさと奥行きさに、1960年代のポップス盛隆期のような素晴らしさに溢れたアルバムです。
楽曲について
冒頭曲1「Reason For It All」は、キーボードの速弾きによるフレーズが印象的なイントロの楽曲であり、元Yesのキーボード奏者:Rick Wakemanを彷彿させるような正確無比なフレージングに一瞬にして心奪われてしまいました。唄メロでは、ファルセットなボーカルをメインで1人だけでなく、グループ全体がヴォーカルをガイダンスし、どことなくキュートな味わいさえ見せてくれるから、唄メロ以外とのギャップに驚かされてしまいます。それでもなお、ハープシコード、ピアノ、ギターが順を追って奏でるソロの数々にはプログレッシブ・ロックのエッセンスに溢れており、プログレとポップがほどよく融合した素敵な楽曲ですね。
2曲目「Lyrics」以降には、ロック然としたエッセンスが溢れた楽曲とプログレッシブ・ロックのエッセンスを優先的に感じえる楽曲がアルバムにバランス良く散りばめられている印象です。
前者は、オルガンをアクセントにイギリスの5大プログレバンドのうちの1つ:Yesのような構成力を魅せる3「Mouldy Wood」、ハードロックのようなリフを中心にゴリゴリとした印象がある5「Hope For A Life」、シアトリカル風なイントロがまるでサーカスをサウンドスケープしてしまう8「Mammoth」などに感じます。
後者は、イントロのギターのフレーズ、メロトロン、そしてボーカリゼーションにイタリアのプログレッシブ・ロックバンド:P.F.Mを想起させるぐらい他楽曲と異なる顔を見せる4「Lovely Luna」、4「Lovely Luna」よりもトーンをおとし、アコースティカルな出だしからじわじわとメロトロンが溢れだす7「Ballet Of The Cripple」、冒頭曲1「Reason For It All」をよりソフトに、メロトロンの旋律がKing Crimsonの抒情的なパートを想起させるような最終曲9「See See The Sun」に感じます。
そして、2「Lyrics」は、アルバムの他楽曲と比べても1960年代や1970年代の英国ロックのヒット曲を十分に感じさせるハイセンスを感じてしまいます。冒頭曲1「Reason For It All」や最終曲9「See See The Sun」よりもキュートなポップ・ソングという佇まいなんです。それでも、アンサンブルには変拍子を多用したり、シンセサイザーの構成にはプログレッシブ・ロックのエッセンスに溢れており、どことなくイギリスのロック・バンド:10㏄の楽曲を彷彿とさせてもくれます。
アルバム全篇、メロディラインの良さが、2ndアルバム以降のさらにメロディックな唄メロ重視のアルバム制作へと繋がることを予見させる素晴らしい楽曲が聴けます。英国ロックを吸収しシンフォニック系とポップ系のバランスが奇跡的にも均衡取れる当アルバムは、儚いメロディックな原石のような感じがしてなりません。
[収録曲]
1. Reason For It All
2. Lyrics
3. Mouldy Wood
4. Lovely Luna
5. Hope For A Life
6. Ballet Of The Cripple
7. Forever Is A Lonely Thought
8. Mammoth
9. See See The Sun
アヴァンギャルドさやノイズ系ではないため、唄モノのプログレッシブ・ポップとシンフォニック系プログレが聴けるアルバムとして、聴きやすさがあります。同国Focusのキュートさにメロディックな面、ポップ寄りなプログレッシブ・ロックや10cc、Procol Harum、さらに、後期Styxなどのアメリカン・プログレハードなどが好きな方におすすめです。
アルバム「See See The Sun」のおすすめ曲
1曲目は、2曲目の「Lyrics」
イントロやヴァース以外にプログレ色があり、イントロや唄メロからポップ寄りな印象が強いのですが、プログレ以外に聴いていても、そのイントロと唄メロのキュートなインパクトは捨てがたい特筆さがあります。
2曲目は、最終曲の「See See The Sun」
当アルバムの中でもファルセットによるヴァースでのコーラスワークが最も心地よく、特に、サビでの輪唱感は素敵なハーモニウムを生み出し、ピアノやオルガンの伴奏にマッチングしているし、中間部のアコーディオンのパートのアクセントも含めて素敵です。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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