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プログレおすすめ:Us And Them「Summer Green and Autumn Brown」(2015年スウェーデン)

公開日: : 最終更新日:2015/12/29 2015年, スウェーデン, フォーク, メロトロン, 女性ボーカル


Us And Them-「Summer Green and Autumn Brown」

第188回目おすすめアルバムは、スウェーデンのプログレ・フォーク系のプログレッシブ・ロックデュオ:Us And Themが2015年9月12日に発表した2ndアルバム「Summer Green and Autumn Brown」をご紹介します。
Us And Them「Summer Green and Autumn Brown」

Us And Themは、2008年に1stアルバム「Based on a True Story」でデビューしたスウェーデン出身の女性のBritt Ronnholm(ボーカル)と男性のAnders Hakanson(ギター、キーボード)のデュオです。

その音楽の特徴は、北欧の地のトラディッショナルさをいくぶん含み、アシッド・フォーク系寄りのプログレ・フォークのエッセンスです。儚くも夢うつつに囁きかけるように歌唱するBritt Ronnholmとアシッド寄りのサウンド・メイキングの要というべきAnders Hakansonによるギターやキーボードが醸し出す室内音楽的な雰囲気からクラシカルなバロック調の延長上とも感じるかもしれません。

1stアルバムに続く当2ndアルバム「Summer Green and Autumn Brown」でも変わらず、

日常から夢うつつと脆くも壊れやすい別世界へ誘うような、1970年代初頭のイギリスはアシッド・フォークがモダンに昇華された1枚として聴きたい1枚です。

楽曲について

ギターとホルンの音色が絡み合う1分弱のインストルメンタルの冒頭曲1「A New Beginning」に続き、ミニマルなアコースティックギターのフレーズとフルートの音色がリードし幕を上げる2「We Are Scared」からは、あたかも北欧の地にて少し穏やかにも花や樹木が茂った公園をおぼろげに歩む情景の記憶を呼び起こすようなサウンドスケープを魅せてくれます。

いずれの楽曲もギターをメインとしたクラシカルなアンサンブルに基調としていますが、Anders Hakansonがトリップ感を覚醒させるかのように様々なユニークなサウンド・エフェクトを楽曲に盛り込みながら、

バロックさとユニークな音色が不思議なイメージをもたせ別世界を生み出すクリエイティビティの高さを感じます。

メロディックな4「State Of Mind」、カウンターメロディや輪唱などを巧みに活かした多重コーラスが心地良い5「Another View Of Us Here Again」と6「Precious Moments」、さらにリフレインするメロディのスキャットや並奏する弦の音色を活かした7「Me and My Mission」など、アルバム中盤では、楽器によるアンサンブルよりもBritt Ronnholmのボーカリゼーションのバリエーションで、夢うつつなサウンド・メイキングが際立っています。

そして、10分にも及ぶ長尺の楽曲8「From The Inside, Looking Out」では、アシッド・フォーク感も満載なインストルメンタルのパートとBritt Ronnholmのヴァースの唄メロがバランス良く、当アルバムでも屈指のプログレッシブな展開の楽曲です。特に、オープニングの数秒間は、どうしたものか、楽曲自体にも静寂のミステリアスさがあるEmerson, Lake & Palmerの楽曲「The Endless Enigma, Part 1(邦題:永遠の謎パート1)」(アルバム「Triogy」収録)のイントロを想起してしまいました。続くヴァースで鳴り響くメロトロンやフルートの旋律は、Britt RonnholmのボーカリゼーションとAnders Hakansonのアコースティック・ギターだけのアンサンブルに、時に夢うつつに、時に不穏ささえ感じえます。

最終曲9「Insight」は短めのヴァースに、一定のシークエンスでミニマルなフレーズを弾くアコースティック・ギターの独奏が聴けます。まるで当楽曲まで続いた夢うつつな時間から目覚めるようにと少しずつ肩を揺り動かすかのようなサウンドスケープを魅せながらクロージングしていきます。

アルバム全篇約37分間の音世界には、夢うつつな感覚で別世界を脳裏に描いているようなサウンドスケープでアシッド・フォーク系のボーカリゼーション、コーラス、インストルメンタルに満ちています。そう、夏の蝕む時期が過ぎ、秋深まる北欧の地にて花や樹木が茂った公園でまどろむ感覚で心をホッとさせたい時に聴き入りたいアルバムですね。

[収録曲]

1. A New Beginning
2. We Are Scared
3. Late Night, Early Morning
4. State Of Mind
5. Another View Of Us Here Again
6. Precious Moments
7. Me and My Mission
8. From The Inside, Looking Out
9. Insight

フォーク系からプログレッシブ・ロックを感じさせるアシッド・フォーク系を聴きたいという導入では、イギリスのプログレ・フォーク系のバンド:Pentangle、イギリスのフォーク歌手:Sandy Denny、Vashti Bunyan、Duncan Browneやスコットランドのフォーク系のシンガー・ソングライター:Donovan、Bert Janschなどのアコースティカルな響きが好きな方におすすめです。

ただし、キーボードの類のドリーミーなサウンド・エフェクトや、Britt Ronnholmのボーカリゼーションやコーラスワークから醸し出すアシッド・フォーク系のエッセンスも交えるため、イギリスのFresh MaggotsやFaraway Folk、Mark Fryを聴く方におすすめです。

アルバム「Summer Green and Autumn Brown」のおすすめ曲

1曲目は、冒頭8の「From The Inside, Looking Out」
1980年代の洗練されたドリーム・ポップとは異なるまさにモダンなアシッド・フォークを源流とするプログレッシブなエッセンスを感じずにいられないんです。メロトロンやフルートの旋律は楽曲の冒頭部や6分30秒前後などで絶妙に強弱で利用され、Britt Ronnholmの同様に強弱をつけたボーカリゼーションと巧みに活かされ、不穏さと夢つつさに、良夢と悪夢を走馬灯のように移り変わる印象を抱きました。

2曲目は、7曲目の「Me and My Mission」
声色やコーラスワークによる技巧を活かしたボーカリゼーションだけでなく、Britt Ronnholmのボーカルぜーションを1つの楽器に見立てて、楽器によるインストルメンタルが並奏し交錯し合うサウンド・メイキングの巧みさが素晴らしいからです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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