プログレおすすめ:Pink Floyd「Wish You Were Here(邦題:炎~あなたがここにいてほしい)」(1975年イギリス)
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最終更新日:2015/12/02
1970年代, Pink Floyd(5大プログレ), イギリス David Gilmour, Nick Mason, Pink Floyd, Richard Wright, Roger Waters
Pink Floyd -「Wish You Were Here(邦題:炎~あなたがここにいてほしい)」
第18回目おすすめアルバムは、イギリスのプログレッシブ・ロックバンド:Pink Floydが1975年に発表したアルバム「Wish You Were Here」をご紹介します。
Pink Floydの7枚目にあたるスタジオ・アルバム「Wish You Were Here(邦題:炎~あなたがここにいてほしい)」は、アメリカのビルボード・チャートにランクインし続け、ロングセラーのギネス記録となった9thアルバム「Dark Side Of The Moon(邦題:狂気)」の次のアルバムです。ロングセラーとなり巷で名盤と云われる次のアルバムとなると、当時のファンの方々は期待を大きくし、出迎えたアルバムだったことと思います。当アルバムが発表された当時の評価は本質的にどのようなものだったのだろうか。とにもかくにもPink Floydの中で個人的に最も好きなアルバムなんです。
バンドは、1968年からRoger Waters(ベース兼ボーカル)、David Gilmour(ギター)、Richard Wright(キーボード)、Nick Mason(ドラム、パーカッション)の4人構成です。
楽曲について
冒頭曲1「Shine On You Crazy Diamond (Part I-V)(邦題:狂ったダイヤモンド)」は初期メンバーのSyd Barrettに捧げられた楽曲です。この曲を一聴すると、そのサウンドにはこれまでになくシンセが音に厚みを加え、ギターはよりエッジを効かせていると思いました。シンセは浮遊感だけでなく幻想感よりも楽曲に重量感を添えているように思えるんです。イントロで奏でられるギターのソロフレーズは、4分前後でより力強さを増したギターの単音リフとドラムも高鳴ると同時に、5分過ぎからブルーズを基調としたフレーズが響き渡ります。この一連の演奏はこれまでのアルバムの楽曲と異なり、すべて8分40秒前後からの唄メロの序章と感じずにいられません。「この」感覚は6thアルバム「Meddle(邦題:おせっかい)」の冒頭1「One Of These Days(邦題:吹けよ風、呼べよ嵐)」とは異なる感覚なんですよね。曲途中でサックスの音色すら響き渡らせ、ブルース・フィーリング的なフレーズが強調され、これまでの楽曲以上に情感溢れてリリカルな比重が高いんです。
この冒頭曲1「Shine On You Crazy Diamond (Part I-V)(邦題:狂ったダイヤモンド)」は形を変え、アルバムの最終曲にもなっています。その間に3曲が挟まれていることで、いずれの曲もSyd Barrettへの想いで綴られているのでないかと考えてなりません。そして、いずれの楽曲もこれまでになく「情感」をたたええていると感じます。
2「Welcome To The Machine(邦題:ようこそマシーン)」は悲痛ともとれるボーカリゼーションが耳を捉えて離さないが、その背景に流れるシンセの音の波とアコースティカルなギターのフレーズは、これまでにみたフォーク系の楽曲よりもロック的な印象です。1曲を通じ、どこまでも悲痛なサウンドで埋め尽くされている。後半のシンセのフレーズも分厚くダイナミックであり素敵な構成です。世情を皮肉った歌詞だけでなく、サウンドにも表現されており、13thアルバム「The Wall」で大きくフォーカスされる世界観の一端を「ここ」で垣間見せます。
3「Have A Ciger(邦題:葉巻はいかが)」は、プログレッシブ・フォーク系のシンガー:Roy Harperが歌唱しています。後半部はもうDavid Gilmourのギターの土壇場であり、聴き入ってしまいます。
4「Wish You Were Here(邦題:あなたがここにいてほしい)」は、各楽器の奏でる力強さをアクセントに、穏やかなバラード調の印象だけで終わらないよう、それでも当アルバムの中では穏やかなサウンドが聴けます。そして、最終曲5「Shine On You Crazy Diamond (Part VI-IX)」でアルバムはクロージングします。
1、3、4を聴くことで、どことなくLed Zeppelinの3rdアルバム「Ⅲ」を想起してしまうのは自分だけでしょうか。
[収録曲]
1.Shine On You Crazy Diamond (Part I-V)(邦題:狂ったダイヤモンド)
2.Welcome To The Machine(邦題:ようこそマシーン)
3.Have A Cigar(邦題:葉巻はいかが)
4.Wish You Were Here(邦題:あなたがここにいてほしい)
5.Shine On You Crazy Diamond (Part VI-IX)
「幻想感」から滲み出るスペーシな音空間と、Pink Floydの中では歌詞も含め「情感」を感じるアルバム「Wish You Were Here」として、プログレのアルバムを聴きたい方におすすめです。
また、当初収録予定だったという「You’ve Gotta Be Crazy」、「Raving And Drooling」の2曲は次回作となる8thスタジオ・アルバム「Animals」の2曲目の「Dog」、4曲目の「Sheep」になったとのことです。当アルバム「Wish You Were Here」の1「Shine On You Crazy Diamond」と同時に制作された2曲であり、このアルバム全貌を解明するためにぜひアルバム「Animals」も一聴することもおすすめします。
「情感」=「プログレな気持」
このアルバムには、いくつかエピソードがあるそうです。
レコーディング中に、初期メンバーのSyd Barrett本人がスタジオに突如姿を現し、メンバーに声をかけたのこと。それでもほぼ本人とは思えない風貌だったと・・・。
アルバムタイトルや4曲目の「Wish You Were Here」の邦題「あなたがここにいてほしい」はバンド側から指定されたということ。そして、冒頭曲の邦題「狂ったダイヤモンド」や、アルバムジャケットの「炎を纏った人物」など、どこととなくSyd Barrettへの想い。オマージュを抱かずにいられません。
9thアルバム「Dark Side Of The Moon(邦題:狂気)」までに感じられた「幻想感」よりも各楽曲が唄メロを重きに置いている印象がありますよね。音空間にシンセが充満し、ギターのエッジがより際立っているさまは、ロマンシチズムよりもリアリズムを感じてしまうんです。エピソードを交えても交えなくても、アルバム的に「Syd Barrett」を意識しているのではないかということは誰もが思うところだと思うんです。
もしもPink Floydの各アルバムを1970年代はじめからリアルタイムで聴いていたのなら、この音楽の変化に「裏切り」と感じたかもしれない。「幻想感」とも取れるプログレッシブさを聴きたい気持ちはあるが、それでも「情感」へと変わったかのような音の艶に対して。でも、個人的には「共感」を感じてしまう。心の許容性ではなく、純粋に「Wish You Were Here」という言葉のフレーズにかけた想いを大切に受け止めたいんです。
・・・・そう、1970年代をリアルタイムで感じえなかった「プログレな気持」です。
聴き手の心持で異なるサウンドスケープが抱くかもしれません。
アルバム「Wish You Were Here」のおすすめ曲
1曲目は4曲目の「Wish You Were Here」
この曲の邦題をバンド側が指定してきた想いを感じえたいからです。
2曲目は冒頭曲「Shine On You Crazy Diamond(Part One)」
楽曲の序章と思われるイントロから、タイトルフレーズによるボーカリゼーション、そして、最後のサックスまで、各フレーズのバランスが整われ、「幻想感」よりも「情感」を感じてしまうからです。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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