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プログレおすすめ:Holy Lamb「Salt Of The Earth」(1999年ラトビア)

公開日: : 最終更新日:2015/12/12 1990年代, シンフォニック, ラトビア


Holy Lamb -「Salt Of The Earth」

第179回目おすすめアルバムは、ラトビアのシンフォニック系のプログレッシブ・ロック・バンド:Holy Lambが1999年に発表した1stアルバム「Salt Of The Earth」をご紹介します。
Holy Lamb「Salt Of The Earth」
Holy Lambは、当時のソ連からラトビア共和国として完全独立を果たした1991年に、ラトビアの地でAigars Cervinskis(ギター、ボーカル)とEriks Cervinskis(ドラム)の兄弟を中心に結成されたスラッシュ・メタル系のバンドです。その後、Uldis Elerts(ギター)、Ugis Zemitis(ベース)、Juris Rats(キーボード)を含めた5人のラインナップとなった1997年にはイギリスの5大プログレバンドの1つ:Emerson, Lake & Palmerに彷彿とさせる古典的なプログレッシブ・ロックのバンドへと変貌し、更に、キーボード奏者:Juris Ratsの存在が大きく現在の音楽性へとステップアップします。

バンドの特徴は、イギリスのプログレバンド:Pink Floyd、Genesisやそのフォロワーとなるポンプロックの重鎮:MarillionやPendragon、そして、Camelなどメロウさやファンタジックさのエッセンスに、ネオ・プログレに通じるギターやキーボードを活かしたメロディアスさまで感じさせてくれるシンフォニック系のアンサンブルです。個人的には、1991年にバンド結成時のスラッシュ・メタルとしてのスキルフルさが活きたテクニカルなクリエイティビティもあると感じています。

当アルバムは、ラトビア共和国独立元年にアルバムタイトルの聖書で意味するところの「社会や人心の模範や手本であれ」から転じ、

「ここからはじまる」という気兼いを感じさせてくれるサウンド
が溢れた素敵なアンサンブルが聴けるアルバムと思います。

楽曲について

冒頭曲1「Whoever Designed This Game」は伸びやかでクリーントーンの2本のギターが交錯し合い幕を上げる楽曲です。楽曲の芯を太くさせるぐらい印象的に、2本のギターは力強さ溢れるネオ・プログレ系のメロディックなフレーズを奏でています。続く2「The Lingering Dream」もまたメロディアスなギター・ソロをメインとした楽曲です。ネオ・プログレ系のエッセンスを十二分に感じさせてくれる憂いを帯びたフレーズが満載なだけでなく、仄かに並奏するピアノのフレーズとともに、Pink Floydを彷彿とさせるサウンド・メイキングも含め、クオリティ高い仕上がりと思います。

3「My Star Untouchable」は、約12分にも及ぶ大曲です。ブレイク時のピアノの特徴あるフレーズもアクセントに、ヴァースでのAigars Cervinskisによるオペラチックな側面を仄かにみせるボーカリゼーションと、想像しがたいほどにクリーントーンからハードエッジさまで、メロディックさをベースに多種多様なフレーズを弾くギターとで楽曲は起伏溢れるドラマチックな展開で聴かせてくれます。

4「Rainfall In Your Heart」は、アコースティック・ギターをメインとしたアンサンブルで幕を上げ、変拍子を巧みに盛り込みながら展開する楽曲です。4分前後のジャズ系のピアノやフュージュン系のギターのフレーズを交えながら、他楽曲以上に変拍子や移調を多用した当パートはHoly Lambらしさ溢れた独自性を感じずにいられません。

約16分にも及ぶ最終曲5「The Sea」は、ナレーション:George Steeleと女性ボーカル:Ieva Parsaのクリエイティブを活かしたオープニングで印象付けが強い展開を示す楽曲です。1分44秒前後から2分10秒前後までのピアノとベースとギターによる各楽器の奏法が平淡さが溢れたパートを皮切りに、ヴァースでのアンサンブルに盛り込んだヴァイオリン奏法、7分前後からの時折みせる高速でミニマルなギターのフレーズ、そのギターのフレーズに呼応するかのようにオブリ―ガード気味に弾くピアノのフレーズとその代わりに力強いギター・ソロ、9分30秒前後からピアノとギターがトーンを合わせて交錯し合うフレーズとユニゾン奏法、フランジャー処理されたギターのフレーズなど、ただ単にメロディックなだけでなく、テクニカルさやスキルフルさを活かしたパートがこれでもかと溢れんばかりに聴けます。アルバムのクロージングに相応しい楽曲だと思います。

アルバム全篇、メロディックさ溢れる2本のギターとキーボードを中心としたアンサンブルがダイナミックな楽曲を中心とした素敵なアルバムです。

[収録曲]

1. Whoever Designed This Game
2. The Lingering Dream
3. My Star Untouchable
4. Rainfall In Your Heart
5. The Sea

Phill Collines期のGensisの1976年発表のアルバム「A Trick Of The Tail」以降のドラマチックにもメロウな音楽性や、その音楽フォロワーとなるMarillionやPendragonなどのネオ・プログレ系を聴く方におすすめです。

4「Rainfall In Your Heart」の中間部で魅せるフュージュン系やジャズ系のアンサンブルもありますが、リズムを駆使したテクニカルでダイナミックにリズム・セクションを交えながら、メロディックなギターの演奏を聴きたいという方にもおすすめです。

アルバム「Salt Of The Earth」のおすすめ曲

1曲目は最終曲2曲目の「The Sea」
起伏溢れ約12分にも及ぶ大作の3「My Star Untouchable」と同様に、ピアノの旋律がギターのフレーズを際立たせるアンサンブルのポジションを担うだけでなく、よりポジショニングの高い旋律を聴かせてくれるからです。

2曲目は3曲目の「The Lingering Dream」
かすかにPink Floyd的な感覚も憶えましたが、メロディックで哀愁を帯びたギターのフレーズに聴き入ってしまいます。特に、4分15秒前後からクロージング直前までにスイッチを入れ替えたかのように奏でる、短め目のギターのフレーズは聴き入るだけでなく印象的です。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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