プログレおすすめ:Emerson, Lake & Palmer「Live At Nassau Coliseum ’78」(2011年イギリス)
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最終更新日:2016/03/12
2010年‐2013年, ELP(5大プログレ), イギリス Carl Palmer, Emerson Lake & Palmer, Greg Lake, Keith Emerson
Emerson, Lake & Palmer -「Live At Nassau Coliseum ’78」
第190回目おすすめアルバムは、イギリスのプログレッシブ・ロックバンド:Emerson, Lake & Palmerが、1978年2月9日に、アメリカはニューヨークのNassau Coliseumでのライヴ音源を2011年に公式リリースしたライブアルバム「Live At Nassau Coliseum ’78」をご紹介します。
当ライブアルバムは、1978年2月9日当日のライブをオープニングからアンコールまで開演中や観客の声援など完全収録された実況録音盤です。実際に耳にすれば分かりますが、オリジナル・アナログ・テープからマスタリングされた音源らしく、大きな歪み、ぼやけやこまりなどはなく、聴き応えは充分にあると感じました。
パッケージには、Keith EmersonとCarl Palmerによるコメントが記載されており、数あるブートレグと一線を描し、公式ブートレグとしての質感を高めています。1977年の5thアルバム「Works」発表後、オーケストラを率いた「Works」ツアーを敢行しますが、ツアー途中で資金難に陥り、バンドのみでツアーを続行しています。
Greg Lake(ボーカル、ベース、ギター)、Keith Emerson(ピアノ、ハモンド・オルガン、ムーグ・シンセサイザー)、Carl Palmer(ドラム、パーカッション)によるトリオ編成のみの演奏は、公式ライブ盤として名高い1974年発表の「Ladies & Gentleme(原題:Welcome Back My Friends To The Show That Never Ends)」のような熱を孕む切迫さ溢れる演奏ほどはいかないまでも、オーケストラが帯同した同ツアー時をもとにした1979年発表のライブアルバム「In Concert」や1993年発表のライブアルバム「Works Live」よりも音の鮮明さを感じずにはいられません。
トリオ編成を活かした「Works」以降の楽曲やキーボードの音色感をクリアに感じる貴重なライブ音源の1枚として、おさえておくべきアルバと思います。
楽曲について
「Works」ツアーの一環であるのか、セットリストには、2ndアルバム「Tarkus」からはタイトル曲「Tarkus」、ライブ・アルバム「Pictures At An Exhibition(邦題:展覧会の絵)」からはタイトル曲「Pictures At An Exhibition」と楽曲「Nutrocker」、3rdアルバム「Trilogy」からは楽曲「Hoedown」が、1曲ずつか2曲しか選曲されているものの、名盤の4thアルバム「Brain Salad Surgery(邦題:恐怖の頭脳改革)」の楽曲は1曲も演奏されていません。
オープニングを飾った冒頭曲1「Hoedown」に続く2「Tarkus」は、「Battlefield」のパートをカットし、「Manticore」から「Aquatarkus」に繋げ、映画「スター・ウォーズ」や「未知との遭遇」のテーマを電子音で織り交ぜています。
3「Take A Pebble(邦題:石をとれ)」は、リプライズとして展開される6「Take A Pebble (Reprise)」との間に、4「Piano Concerto #1, 1st Movement」と5「Maple Leaf Rag」を挿入させ、3rdアルバム収録の楽曲「The Endless Enigma (Part One)(邦題:永遠の謎 パート1)」から「Fugue(邦題:フーガ)」、「The Endless Enigma (Part Two)」を彷彿とさせる流れを生み出し、よりクラシカルな楽章を展開しています。特に、6「Take A Pebble (Reprise)」によるKeith Emersonの打鍵の感覚は半端ないです。
ライブ中盤では、抒情性を展開するGrek Lakeによるパート楽曲(7「C’est La Vie」、8「Lucky Man」)やCarl Palmerによるパート楽曲(8「Tank」、9「Drums Solo」、10「The Enemy God Dances With The Black Spirits」)の前後に、9「Pictures At An Exhibition」や7「Nutrocker」の本来ライブ公式楽曲や、「Works 2」収録の楽曲(1「Tiger In A Spotlight」と2「Watching Over You」)が印象的に挟み込みまれています。
そして、最大の聴きどころは、7「Pirates(邦題:海賊)」とアンコールの8「Fanfare For The Common Man(邦題:庶民のファンファーレ)」でしょう。特に、前者は、スタジオ収録版でのGrek Lakeのシアトリカルな歌唱がフルに冴えわたり、ツアー当初のオーケストラ編成ではないため生の管弦楽がアンサンブルに組み込まれていないことに対し、ぜひこの素晴らしいライブ・パフォーマンスを生の管弦楽で聴いてみたい!と感じさせてくれるダイナミックで素晴らしいアンサンブルが収録されています。
[収録曲]
[Disc1]
1. Hoedown
2. Tarkus
3. Take A Pebble(邦題:石をとれ)
4. Piano Concerto #1, 1st Movement
5. Maple Leaf Rag
6. Take A Pebble (Reprise)
7. C’est La Vie
8. Lucky Man
9. Pictures At An Exhibition(邦題:展覧会の絵)
[Disc2]
1. Tiger In A Spotlight
2. Watching Over You
3. Tank
4. Drums Solo
5. The Enemy God Dances With The Black Spirits
6. Nutrocker
7. Pirates(邦題:海賊)
8. Fanfare For The Common Man(邦題:庶民のファンファーレ)
なお、収録楽曲で2「Tarkus」、2「Watching Over You」、3「Tank」、4「Drums Solo」、5「The Enemy God Dances With The Black Spirits」の4曲は、2010年発表のライブ・ブートレグ盤「A Time And A Place」にも収録されていますが、5thアルバム「Works」発表後の1970年代後半のライブ活動を知る上で貴重な音源と思います。
まず、全篇キーボードを主体として、時にハード、時にリリカルに抒情さあるアプローチで聴かせるクラシカルさを醸し出すロックが好きな方におすすめです。
当ライブアルバムでEmerson, Lake & Palmerを好きになった方は、当「Works」ツアー以前のライブの雰囲気を味わうと云う観点で、1974年発表の公式ライブ盤「Ladies & Gentleme(原題:Welcome Back My Friends To The Show That Never Ends)」を聴くことをまずおすすめいたします。
また、当アルバムに収録されたセットリストでは、名曲「Karn Evil #9(邦題:悪の経典)」は演奏されていないものの、名曲と呼ばれる長尺な組曲が数多く収録されています。それら名曲のオリジナル音源を辿る聴き方もおすすめです。2「Tarkus」で2ndアルバム「Tarkus」、9「Pictures At An Exhibition」と6「Nutrocker」でライブ・アルバム「Pictures At An Exhibition」、7「Pirates」と8「Fanfare For The Common Man」で5thアルバム「Works」に手を伸ばしてはいかがでしょうか。
ライブ音源を耳にし、興味を持った楽曲からオリジナル音源を辿ろうとする思考、そんなプログレな気持ち。みなさんはいかがですか?
「Pirates」が好き過ぎる!
最後に、youtube動画で大好きな「Pirates」の2つのバリエーション(オリジナル音源とオーケストラ帯同ライブ音源)をご紹介します。
はじめは、1977年の5thアルバム「Works」収録の音源です。
Emerson, Lake & Palmer -「Pirates」(August 26, 1977 at Montreal’s famed Olympic Stadium)
次に、2010年発表のライブアルバム「Live in Montreal 1977」収録で、1977年8月26日にカナダはモントリオールのOlympic Stadiumでのオーケストラ付きの演奏です。
Emerson, Lake & Palmer -「Pirates」(August 26, 1977 at Montreal’s famed Olympic Stadium)
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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