プログレおすすめ:Osiris「1st Album」(1981年バーレーン)
Osiris – 1st Album「Osiris」
第77回目おすすめアルバムは、バーレーンのシンフォニック系のプログレッシブ・ロックバンド:Osirisが1981年に発表した1stアルバム「Osiris」をご紹介します。
Osirisはバーレーンで「プログレッシブ・ロックバンド」と括るのではなくとも有名なバンドであり、当アルバムはおそらく1980年代初頭の名盤にもあげられると思われます。少なくとも中近東やアラブ圏の1980年代初頭のプログレッシブ・ロックのアルバムでは名盤です。
バンドは、ボーカル、ギター、ベース、ドラムに、当バンドの特徴的なサウンドの1つであるオルガンを含む、キーボード奏者が3人おり、全7人のメンバー構成です。バーレーンの地となるアラビア文化圏特有のリズム感が聴けるパートもありますが、サウンドの全体像は5大プログレバンドのうちの1つ:GENESISを想起させるようなファンタジックさのあるサウンドがイメージに近いです。バーレーン出身のバンドであると先入観をもたずに当アルバムを聴けば、そのリズム感はアレンジの1つとして散りばめれたとも考えられますし、同1980年代初頭にイギリスで台頭するであろうポンプロック系に属するバンドとして聴いていてもおかしくないでしょう。
楽曲について
シンセの突起な発音と同時に、キーボードとギターの一定のシークエンスのリフで幕を上げる冒頭曲1「Fantasy」は、曲名に似つかわしいイメージのイントロ部と思います。さらに1分前後からはエッジの効いたエフェクティブなギターにドラムの轟音で力強くフィルインし、メロディアスでいて甘いボーカリゼーションのヴァースがなだれ込みます。ヴァース間のギターのフレーズ、4分前後のギターのソロも含め哀愁を帯びたサウンド感がどこまでも儚さを感じてしまうサウンドスケープに対し、バーレーンのバンドが奏でれるプログレッシブなサウンドなのかと驚きを隠せずにいられなくなります。テクニカルでありながらもどこまでもメロディを重視したギターは特筆に値します。
カモメのSEから2「Sailor on the Seas of Fate」はじまり、シンセの音色にシークエンスに絡み合うパーカッシブな音使いが聴ければ、アラビア文化圏のバンドであることを再認識させてくれます。それでも、さらにアンサンブルに重ねられていくギターの哀愁を帯びたフレーズがPANの右側、左側に配置され続けて弾かれたり、突如フェードアウトしフィルインしてからの後半部のヴィブラフォンとギターによるリリカルでいてファンタジックなフレーズを聴くと、メロディアスなアンサンブルに対し冒頭曲1「Fantasy」とともに素直に溜息をついてしまうことすら忘れてしまいになります。
3「Struggle to survive」はハードなタッチではじまりながらも、1や2と同様にやはり哀愁を帯びたアンサンブルにヴァースで埋め尽くされています。ヴァースやテーマごとに「間」があることや、その「間」を活かしたこみ上げるように唄い込まれるヴォーカリゼーションへの工夫に驚かせられながら、ヴァース間やエンディングのロッキングなギターのリフやエフェクティブな音使いには、新鮮な響きにすら聞こえますね。
4「Atmun」はギターのリフに、キーボードの淡々としたリフが絡み合うインストルメンタルな楽曲。淡々と終わるかと思いきや、後半部にはメロディックなフレーズをユニゾンするギターとベースによるパートでここまでの楽曲の哀愁さのあるトーンを引き継ぎ聴かせてくれます。そして、その後は、オルガンも交え、少し荒々しさを交えたギターのソロを聴かせてくれて、イントロ部の淡々としたリフを繰り返しクロージングへ向かいます。クラウトロック的な音処理が少し垣間見せるかもしれませんね。
5「Embers of a Flame」も3「Struggle to survive」と同様なタッチで開始し、ヴァース間にアクセントとして印象深いギターのリフですが、ヴァースはプログレフォークにもあるコーラス感が漂い、仄かな儚さを讃えてるような印象を与えてくれるんです。ギターやオルガンのソロはここまでの一連の楽曲のメロディアスなスケールではなく、弾き倒し重視で荒々しさがあるといえば良いでしょうか。起伏激しく盛り上がりを見せていきます。
冒頭曲1から5までのイントロとは明らかに異なり、メロディアスなギターのフレーズのイントロではじまる6「A Story of Love」は、ヴァースも含めよりメロディアスさを重視させていると主張しているようで、こんなにもメロディアスなギターのフレーズを聴いていても飽きさせないのが素晴らしいですね。ヴァースに仄かにヴィブラフォンと思わせるアンニュイさのある音使いに、ピアノのリリカルなフレージングまで、繊細さに恍惚となってしまうところで、4分前後から聴いている心を裏切るかのようにエッジの効いたギターのフレーズ、ギターのリフにオルガンのソロも重なっていく様には一聴した時には思考回路が止められましたね。それでも5分前後からラスト1分間はソロパート以前のテーマへと戻り安堵さえ憶えました。
最終曲7「Paradox in A Major」はメロディアスでありながらも、ヴァースも含めた主要なテーマや浮遊感のある処理で醸し出されるパーカッシブなパートとギターソロからは、当アルバムでは最もアラビア文化圏を想起させてクロージングします。
アルバムジャケットの肖像は、おそらく古代エジプト神話に登場する神「Osiris」によるものと思われます。いっぽうで「Osiris」は、太陽系の小惑星「Osiris」やペガスズ座の惑星「Osiris」でも利用される言葉です。エジプト神話特有の神秘性を仄かに纏いつつも、宇宙へ拡がる空間的なサウンドとともに、哀愁さが琴線へ触れて儚いサウンドスケープを見せてくれる素敵なアルバムと思いました。
[収録曲]
1. Fantasy
2. Sailor on the Seas of Fate
3. Struggle to survive
4. Atmun
5. Embers of a Flame
6. A Story of Love
7. Paradox in A Major
1970年代のプログレ隆盛期から下降し、MTV時代を迎え、さらにヴィンテージ系のプログレッシブ・ロックバンドとともに、ラウドでありながらもメロディアスなPOPさを持つポンプロック、所謂ネオプログレ系のサウンド(1980年代イギリスで有名なmarillionやpendragonなど)を好きな方におすすめです。
荒々しさは、Burn世代の第3期のDeep Purpleと1970年代後半までで大仰しいコーラスワークがないUriah Heep、ファンタジックさにダイナミズムは、5thアルバム「Dancing With The Moonlit Knight(邦題:月影の騎士)」以降のGENESISなどをイメージしてしまいます。1980年代後半に消えゆく系統なのですが、そのキーボードを多用したサウンドは変拍子、リズムチェンジなどテクニカルさにはない華麗さが感じてなりません。
アルバム「Osiris」のジャケットから連想
どうしたものかドイツのプログレッシブ・ロックバンド:Tibetが1979年に発表した1stアルバム「Tibet」のアルバムジャケットを意識してしまいうんですよ。同様に「ジャケ買い」したくなる衝動にかられます。
▼Tibetが1979年に発表した1stアルバム「tibet」のジャケットはこちら
Tibetはドイツ特有のクラウトロックよりも英国のシンフォニック系らしさがある点ではOsirisと共通したサウンドのバンドです。ただ、ハモンドオルガンをアンサンブルに加え、シンフォニック系といってもそれほど拡ろげた空間を意識をもたないサウンドが特徴です。後日、あらためてご紹介させて頂きますが、エジプトやアラブを想起させるジャケットに神秘的で惹きこまれてしまいますね。
アルバム「Osiris」のおすすめ曲
1曲目は、2曲目の「Sailor on the Seas of Fate」
当アルバム中でも10分を超える大曲で、前半部と後半部の合間に一瞬フェードアウトしフェードインする音の「間」があり、それまでの流れもそれ以降の流れもどちらも捨ておけない哀愁さが詰まっており、ただただ聴き入ってしまうんです。
2曲目は、6曲目の「A Story of Love」
はじめてアルバムを冒頭曲から続けて聴いた時に衝動が隠せないことだけでなく、前半のパートと中間のソロパート、そして、前半のパートにドラムが強めにサウンドを引き締めるアプローチも特筆しがたいからです。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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