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プログレおすすめ:Ash Ra Tempel「Freindship」(2000年ドイツ)

公開日: : 最終更新日:2015/12/02 2000年代, クラウト・ロック, ドイツ


Ash Ra Tempel -「Freindship」

第41回目おすすめアルバムは、ドイツのクラウトロック系のプログレッシブ・ロックバンド:Ash Ra Tempelが、2000年に発表したアルバム「Freindship」をご紹介します。

Ash Ra Tempel「Freindship」
Ash Ra Tempelは、1970年に、Manuel Gottsching(ギター、オルガン、エレクトロニクス)とHartmut Enke(ベース、ギター、エレクトロニクス)に、同国ドイツのプログレッシブ・ロックバンド:Tangerine Dreamを脱退したKlaus Schulze(ドラム)によるトリオで結成し、1971年に衝撃的な名盤である同名1stアルバム「Ash Ra Tempel」を発表しました。

1976年にバンド名を「Ashra」に変更後も作品を制作し発表し続け、当アルバム「Freindship」は、「Ashra」名義のアルバムを含めれば、16枚目のアルバムにあたります。

そして、2015年現在、初期メンバー3名のうち、2名が参加したラストアルバムです。

なぜそうなるかというと・・・

バンド初期のAsh Ra Tempel

1stアルバムの制作時に、メンバー3人(Manuel Gottsching、Hartmut Enke、Wolfgang Mueller)全員がマリファナやLSDをふんだんに取り込み、仕上がったアルバムは、生まれるべく生まれたトリップ感覚満点のアルバムと云われています。当時のフォーマットであるレコードのA面とB面に、20分程度の楽曲が1曲ずつ並び、ごった煮のインプロヴィゼーションを堪能することが出来ます。

・・・鋭利な刃物のように刺々しいフレーズを掻き鳴らすManuel Gottschingのギター・・・

・・・あまりにも手数の多さが際立つKlaus Schulzeのドラム・・・

・・・どんよりとした感覚を醸し出すブリブリとしたフレーズのHartmut Enkeのベース・・・

の三者三様の個性が満載ですが、予測不可能な演奏と云うよりも、どこまで弾けばどこまで叩けば演奏は終わるのか、先が見えない個性のぶつかり合いが、とめどない陶酔感をうむ傑作と云われているそうです。

ただし、その音楽に対するクリエイティブの追及に無理をしすぎたのか、ドラムのKlaus Schulzeは、シンセサイザーによる音楽性の追求を理由に、1stアルバム1枚で脱退してしまいます。メンバーが2人となったAsh La Templeは、その後も活動し続けるも、Hartmut Enkeは、マリファナとLSDの大量摂取の影響かどうか音楽業界のみならず、世間から姿を消し去ります・・・。

衝撃な1stアルバムも含めた活動には、イギリスの5大プログレバンド:Pink Floydと同様に、サイケデリック文化に影響を受けたバンドと括られることが多いようです。当時、Pink Floydは、フラワームーブメントの中、サイケデリック・ロックやスペースロックから駆け出し、徐々に、リアルな質感の比重が増え、スタイリッシュで幻想さ溢れるサウンド・メイキングを構築していきます。

そして・・・

2000年のAsh Ra Tempel

1975年発表の6thアルバム「Inventions For Electric Guitar」以降、Manuel Gottschingを中心に、メンバーを入れ替えながらも、ギターのオーバーダビングとディレイ効果によるミニマムなアンサンブルで当時のテクノの原型と思われるサウンド・メイキングを行い、さらに、1980年代に入り、バンドのサウンドは、アンビエントを想起させるサウンドへと変貌し続けた印象があります。

当アルバム「Freindship」は、

久々に、バンド名「Ash La Tempel」で、

久々に、Klaus Schulzeが参加したアルバムとして、

デビュー30周年の記念のアルバムとして、

オリジナルメンバーが2名揃ったアルバムとして、

かつてのメンバーだった故Hartmut Enkeに捧げるアルバムとして、

そして、再結成されたAsh Ra Tempel名義の最後のスタジオ作品としても重要な一枚なんです。

Manuel Gottsching(ギター)とKlaus Schulze(パーカッション、シンセ)のアンサンブルは、シンセをベースに、デジタル音でドラムやパーカッシブさを表現し、音楽的にも、バンドの状況にも、たとえば、Pink Floydの1975年発表のアルバム「Wish You Were Here(邦題:炎~あなたがここにいてほしい)」に近い印象を持つかもしれません。

楽曲について

冒頭曲1「Reunion」は、すでに1stアルバム時の生ドラムやパーカッション、刺々しいギターとは全く異なるサウンドで約30分に渡り聴かせてくれます。13分前後からのディストーション、24分前後からのワウなど、エフェクティブさをあるものの、効果的に、1つ1つのフレーズを変化させては重ねていくギターの独奏は、楽曲全篇が約30分のアンビエントな感覚で聴き心地良さがあります。

2「Pikant」は、1「Reunion」や3「Friendship」と異なり、Klaus Schulzeがシンセでリズミカルな旋律を奏でることで、ほんのりとした印象も抱く楽曲です。11分以降、ほんの1分だけはシンセだけの旋律が音の空間を占め、12分前後では、Manuel Gottschingのスパニッシュ風のギターのフレーズに清涼さすら感じえます。続いて、Klaus Schulzeがリズミカルにシンセドラムがフィルインさせれば、心はいやがおうにも高揚し、17分前後以降、少しばかり焦燥感を煽るように、ギターが奏でるフレーズにセンチメンタリズムさが溢れ、楽曲はいよいよクロージングへと到達します。楽曲最後まで清涼感溢れるアンサンブルで押し切って欲しかったと思いつつも、後半部でみせたセンチメンタルと云う心を不安さに陥りさせる展開に、Ash Ra Tempelのユニークさを感じずにいられません。

最終曲3「Friendship」は、オープニングからたえず、Manuel Gottschingのギターの旋律が執拗なまでにこれでもかとスイープするのが印象的な楽曲です。楽曲の全体感は、ブルース・フィーリングを除いたPink Floyd風のサウンド感ともとらえがちですが、どこまでも物悲しくむせび泣くように語られるギターの独奏は、心を掻き毟られてしまいそうになります。また、その演奏へのアプローチには、あらためて、1stアルバムでの「終わりのないフィーリング」が脳裏をよぎりました。

13分前後からは、Klaus Schulzeがドラムシンセでメリハリをつけたリズムを刻みこもうとしているのですが、音の低位かミックスの問題か、そのメリハリをも消し去るようにギターの独奏は最後まで途絶えない印象を抱かせます。22分前後にいちど鳴りを潜めたギターの旋律は、25分以降、微かにフレージングを響かせ、楽曲はクロージングを迎えます。

きっと楽曲タイトル「Friendship」の和訳「友情、友愛」の意味する言葉とは裏腹に、故Hartmut Enkeに捧げるアルバムの楽曲としては、最も「情感」を立ち込めたサウンドスケープを感じずにいられません。そうなんです。「Friendship」なのだから「友情、友愛」を想起させてくれそうなサウンドを感じ得たいのに、個人的には、裏腹なサウンドスケープを見てしまうのです。

アルバム全篇、3曲で約75分の長尺なアルバムです。残されたメンバー(Manuel Gottsching、Klaus Schulze)による想いをしっかりと受け止めるために、当アルバムを聴くための時間もまた、しっかりと持たないといけないと感じてしまいますね。

[収録曲]

1. Reunion
2. Pikant
3. Friendship

幻想さや空間音処理を意識したサウンド、もしくは、アンビエントな音楽が好きな方におすすめです。

もちろん、Pink Floydの1975年発表のアルバム「Wish You Were Here」が好きな方にもおすすめです。

Hartmut Enkeに捧げるアルバムとして

Pink Floydもまた、1975年発売のアルバム「Wish You Were Here」で、初期メンバーのSyd Barrettに捧げた楽曲「Shine On You Crazy Diamond (Part I-V)(邦題:狂ったダイヤモンド)」を収録しています。初期のサイケデリック感から当アルバム「Freindship」でのシンセで厚みを感じるサウンドには、Pink Floydのアルバムの位置付けを考えると、比較するにはおこがましいまでも、バンドがアルバムに込められた想いを意識してしまえば、どうしても両方を意識合いしながら聴き感じてしまうアルバムです。

▼アルバム:Pink Floyd「Wish You Were Here(邦題:炎~あなたがここにいてほしい)」のレビューは下のリンクから▼
プログレおすすめ:Pink Floyd「Wish You Were Here(邦題:炎)」(1975年イギリス)

ぜひ、これを期に、Pink Floydのアルバム「Wish You Were Here」とAsh La Tempelの当アルバム「Freindship」の2枚とも時を置かずに、意識し聴いて欲しいと思います。

アルバム「Freindship」のおすすめ曲

※アルバム1枚を通じ全インストルメンタルな楽曲ですの、おすすめ曲は控えさせていただきます。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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